2013年10月19日
ドイツのウルム市で開催された専門家会議の概要
(注:PDF)
http://www.fukushima-disaster.de/fileadmin/user_upload/pdf/japanisch/Health_Effects_of_Ionizing_Radiation_Japanese.pdf
チェルノブイリと福島の「死の地帯」で実施された、生命サイクルの速い生物を対象とした数多くの調査は、採集地の放射線量に相関して重篤な遺伝的欠陥の現われることを示している。
相応の被害が人間においても低線量の放射線によって現われることは、古く から知られている。世代ごとに引き継がれる、すなわち遺伝的に定着した放射線被害は、例えばチェルノブイリクビダートル(事故処理作業員)の子のこどもたちにおいて、頻繁に報告されている。
(略)
日本の原爆被爆者が受けたのは、短時間の、貫通力のある高エネルギーのガンマ線である。放射線の生物学の研究によると、そのような放射線は、放射性核種の体内摂取によって起こるアルファ線やベータ線による内部被ばく、あるいは、通常の環境放射線範囲におさまる線量の、自然および人工放射性同位体を原因とする慢性的なエックス線やガンマ線による被ばくと比較して、体内組織への損傷が少ないことが実証されている。
原爆から放出された放射線は、非常に高線量だった。その放射線はかつて、低線量の放射線に比較して変異原性が高いと考えられていた。ICRPは現在でもこの仮定が有効であるとし、彼らの発する勧告の中では、発がんリスクの数値を2で割っている。職業上放射線にさらされる労働者のグループを対象とした研究はこの仮定に反する結果を出しておりもはやWHOもリスク係数を二分することを正当とは見なさなくなっている。
広島、長崎では、放射性降下物と中性子放射線による放射化がもたらした影響が顕著であったにもかかわらず放射線影響研究所(RERF)はこれらを考慮に入れなかった。そのことによって、実際の放射線の効力は過小評価されることになった。
(略)
原爆投下後の広島・長崎を見舞った被災状況を生き延びることができたのは、特に生命力の強い人々であったと想像できる。つまりひとつの選択されたグループ(適者生存)を形成した。
そのため調査の対象となったグループは、一般的な人口集団を代表していたとは言えない。このような選抜の働いた結果放射線リスクは約30%低く見積もられることになった。
原爆被爆者たちの多くは、社会的に迫害されていた。そういった事情から、例えば子孫の結婚や社会復帰のチャンスを逃さないように、出身地また子孫に現われた疾患について彼らが正直な報告を行なわないことが度々あったと考えられる。
(略)
まだ誕生していない生命を守り未来世代の遺伝子を無傷のままに残すことが最大の優先事項とされなければならない。そのためには、成人をモデルとする現在の放射線防護法をさらに補完し、放射線に対してひときわ脆弱な胎児と小児に焦点を当てる必要がある。