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2012年2月1日水曜日

〔音源〕小出裕章氏は原発が「トリチウム」を放出している問題を語った


☆米 外部電源失われ原発緊急停止 (NHK)

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120131/t10015656851000.html

http://backupurl.com/zg5e5i

また、原子炉の圧力を下げるために、2次系の冷却水を使った装置から、蒸気の放出も行われており、蒸気の中には放射性物質のトリチウムがごくわずかに含まれているということですが、NRCと電力会社は、「通常の運転でもトリチウムは蒸気などで定期的に放出されており、安全性に問題はなく、健康に影響はない」としています。



【音源】20120131 たね蒔きジャーナル
京都大学原子炉実験所助教 小出裕章
http://youtu.be/XIlEZ7wncS8



☆1月31日(内容起こし)小出裕章氏:米・バイロン原子炉の異常停止とトリチウムの問題、放置された伊方原発3号機の内部告発@
http://www.asyura2.com/12/genpatu20/msg/620.html
投稿者 クマのプーさん 日時 2012 年 2 月 01 日 10:50:17


(水野氏)今お伝えいたしましたアメリカの原発事故について、まず教えていただきたいと思います。今回、このバイロン原子力発電所というところ、原子炉が緊急停止しました。『ベント(蒸気を外に逃がす)』が行われたということなんですが、確かこのベントというのは、そう簡単にやることではない、よほどの緊急時のことだと、小出先生がおっしゃっていたように思うのですが、いかがでしょう?

(小出氏)そうです。私も今、初めてこのニュースを聞きまして、事故の詳しいことは判りません。ただし、トリチウムという放射性物質が放出されたと今聞きました。そのトリチウムというのは、実は水素の同位体と私たちが呼んでいるもので・・・

(水野氏)『同位体』ってどういうものですか?

(小出氏)普通私たちが水素と呼んでいるものの3倍重たい水素なのです。水素でありながら重さの違う、そういうものがあるので、同じ元素でありながら重さが違うものを私たちは『同位体』と呼ぶのですが、水素の同位体で放射能を持っている水素なのです。

それが出てきたということは、一次冷却水の蒸気を放出したということだと私は思います。

ただし、燃料そのものはまだ破損はしていないので、
「一次冷却水の蒸気は放出したけれども、他の放射能は放出していません」
という、そういう説明になっているのだなと、私は聞きました。

ただし、一次冷却水を放出しなければいけないという事態は、それなりに深刻です。どうしてそんなことになったのかということを知りたいと、今思います。


(平野氏)トリチウム自体の特性っていうのは、どうなんでしょうか?

(小出氏)大変低いエネルギーのベータ線しか出さない、一番エネルギーが高くても18.6キロエレクトロンボルトという、放射線としてはものすごいエネルギーの少ない、つまり危険度の少ないものなのですけれども、いかんせん水素ですので、一度環境に放出してしまうと、回収の方法すらがもう無いのです。水になってしまいますので、どんなに水をきれいにしようとしても、水そのものですからもう取り除くこともできないし、人間という生き物は水が無ければ生きられませんので、必ず体に取り込んでしまうし、細胞の中にどこへでも入ってきてしまうし、有機物に化合するとDNAの一部にもなってしまうというようなものですので、放射線の毒性だけではない毒性もあるだろうと考えられています。

かなり大量に原子炉の中でもできますので、注意をしなければいけないとかねてから私は思ってきました。


(水野氏)今の話だと、水になってしまうので生命体が体に取り込んでしまうというのは、いわゆる内部被曝する危険性が高いって意味でしょうか?

(小出氏)そうです。外部被曝という意味では、ほとんど問題になりません。ガンマ線を出しませんし、ベータ線のエネルギーもものすごい低いので、外部被曝という意味ではほぼ問題ないと思っていただいて結構です。

(水野氏)ということは、今すぐに外部被爆で何らかの急性な症状が出るということは考えにくいですよね?

(小出氏)そうですね。

(水野氏)ただ、この後、除去できないということはずっと残るわけですから、それを体内に取り入れるということは、直接しなくても自らいろんな植物やら作物・・・魚類などに移って、そして人間にっていう恐れは・・・あるわけですよね?

(小出氏)そうです。最終的には地球全体の水循環の中に取り込まれていきますので、海全体がトリチウムで汚れるとかそういう形になるわけですけれども、それより薄まる前に局所的なトリチウムによる汚染というものが起こる可能性がありますし、今回の事故がどれだけのものか私はまだよく判りませんが、注意はしなければいけないと思います。

(水野氏)それは私らはどうしたらいいんですか?

(小出氏)まぁ、日本の人が今この米国のバイロン原発の事故で出てきたトリチウムに、格別に注意をする必要はありません。


(平野氏)先生、ただ、今日の昼前のニュースで、アメリカ政府は
「普段から原発の放出する蒸気の中にこの物質が含まれてるので、あまり影響はない。心配することは無いんだ」
みたいなのが一報で流れたんですよね。
 そんなに普段から放出されてるものだとしたら、今の話だと逆に言うと怖いなと。内部被曝に日本の原発でも普段から水蒸気の中に放出されてるのであれば、怖いなと思ったんですが。

(小出氏)水蒸気というか、水蒸気もそうですけれども、原子炉から出てきてしまうと、トリチウムというのは必ず水になってしまうのです。ですから、どこの原子力発電所でもそうですけど、排水処理という廃液処理をしてるわけですけれども、『汚れた放射性物質を水の中から取り除いて綺麗にします』と言ってるわけですが、トリチウムは水そのものですので、どんなことをやっても取り除けないのです。

ですから、排水処理をしたといって綺麗になったと言いながらも、トリチウムだけはどこの原子力発電所からも日常的に出てきていますという、そういう特殊な放射性物質なんです。


(水野氏)え?日常的っておっしゃったってことは、事故を起こさないで、普通に稼働している原発からもいつもトリチウムは出てるんですか?

(小出氏)そうです。

(水野氏)水となって?

(小出氏)はい。私がお守りをしている京都大学原子炉実験所の排水にもトリチウムはあります。取れないのです。これは。

(平野氏)そこが怖いですね。


(水野氏)そこがよく私判ってないんですけど、事故を起こさなくても原発というのは、トリチウム以外にも何らかの放射性物質を外へ出してしまうものなんですか?

(小出氏)もちろんです。技術というのは、100あるものを100捕まえるということはできませんで、
「99捕まえます。」
「もっと頑張って99.9捕まえます。」
「もっと頑張って99.99捕まえます。」
ということはできるのですけれども、完璧にゼロにすることはできませんので、どこの原子力発電所でも、もちろん私のところの原子炉でも何がしかの放射性物質は日常的に出さざるを得ないのです。